こんにちは、トシヒコです。
今日の話は、魅力的になろうというダンサーにとって最優先ではないのですが、今よりもっと魅力的になりたいなら考えてみると良い と私が思っていることの一つです。
それはかつて若手で駆け上がって行った自分が、相当に頭を悩ませられながらも向き合って、後の成功に繋がることとなった大事な要素です。
技術を見つめているだけでは見えてこない、大切な魅力の要素の1つにフォーカスしたいと思います。
思わぬ一言で 突きつけられた課題
大学生になってから競技ダンスに打ち込む中で、少しずつ成長を遂げてプロ転向を果たし、プロとしても成績が出てきた頃、私への評価はスピード感や迫力、そして伸びやかさといったフィジカル面が前面に出ていました。
またその他に印象として、他のラテンダンサーに比べて雰囲気は爽やかである、とか清潔感があるといった部分での評価がありました。
こういった部分は個性として大切な部分と思い、それは私がプロとしてやっていく上での自信の1つにもなりました。
ですから当時の私は、そこに上乗せしていくようにテクニックや表現力、そして身体能力のレベルの高さを随所に見せていくことで、海外においても より好成績を得ることにつながると判断して努力を重ねていたわけです。
実際のところ確実に知識、経験、テクニックが向上していき日本ではファイナリストにもなり海外のロンドンインターナショナルでは必ずロイヤルアルバートホールに勝ち残り、ほぼ毎年ベスト30に残るといった好成績で外国人のコーチャーも日本人選手の中の期待の若手として注目し期待しつつのレッスンをしてくれていました。
ですが私の中ではより良い成績を収めつつも実際のところライジングスター戦では予選落ちしてしまったりと波のある成績で、常に勝てるわけではありませんでしたし、私がイメージするハイレベルなダンサーとは競技会を離れたときのダンスでも更に人々を感動させられるレベルのダンサーでした。
そんなダンサーになるためにと自分たちのダンスの魅力を高める要素を探し続けている日々でした
そしてある時イギリスでレッスンを受けている時のことです。コーチャーは元世界チャンピオンのヘイゼル・フレッチャーでした。
その日彼女は私のダンスを見て言ったのです。
今のToshiのダンスを見ても、私は一緒に踊ってみたいという気持ちになってこないのよ。
ショックでした。そして、わかってきました。
スポーツ的な要素とは別の大切なこと
すごい技があるとかサーカスのようなことができる、あるいは誰にも負けないスピードがある、
そういった事はそのダンサーを際立たせるし、競技会においてもプラスの要素です。
でも、(ああこの人と一緒に踊ってみたい)
そう思わせることができるか? できないか?
それはそのダンサーの魅力の度合いを表しているように感じました。
ペアで踊るダンスの持つ魅力の原点のようなものがそこにあるはず。
あの人と手と手をを取って一緒に踊りたい、すぐそばでステップを踏んでみたい
観る者にそんな感情を沸き起こすことができるダンサーの持つ、魅惑にも似た魅力が欲しいと思いました。
私のイメージする優れたトップダンサー達にはそれがあるから。
近寄りがたい雰囲気と同時に、カリスマ的な個性と「色気」が。
男性、女性が一対一で関係するダンスにおいて第三者をも惹きつけるその魅力。魅惑にも似たそれは「色気」と言うものなのではないかと思ったのです。
アンテナを張り センスを磨く
自分が男性なので色っぽい女性と言う言葉はテレビや映画などからも印象があり、身近に捉えられてイメージし易いものでしたが、男性の持つ色気となると、一体どんな・・・・・実際じっくり考えても言葉で表せる範囲のものでは無いと思いました。
男でも色気と言うものをダンサーとしての私がフロアの上で身に纏う事ができたなら、これまでの自分の届かなかった所へと手を伸ばせるのかもしれない。
自分がそれを体現できるダンサーへと成長しなくてはこの先は行き詰まってしまうとも強く思った次第です。
ヘーゼルのレッスンの後から、どんな仕草や振る舞いそして雰囲気に色気といったものが見えてくるのか日ごろから考えるようになりました。考えると言うよりはアンテナを張るようにいろいろなものを観察して考察していた感じです。
そして色気を体現するバロメーターとして、自分が練習している際に自分のダンスにおけるその動作やパートナーと作り出す空間の雰囲気を見た人が、はたして私と踊ってみたいと感じられるのだろうか、といった問いかけを念頭に置くようになりました。
結果として身体的な能力への意識が殆どだったかつての自分とは違う、世界基準を意識して好成績を収めるダンサーに成長できた理由の一つはここにもあると確信しています。
プロの私達は、そのダンスにおいて瞬間瞬間に人々にとって非日常の憧れられるような空間を表現していく、そこに大きな意義があるように思います。色気があることはその助けであり、もちろんそれは肌の露出とかいったものとは別のものであるべきと私は考えています。
もとよりセクシーだと言われるラテンダンスにおいてもボールルームダンスというジャンル特有とも言える品の良さが見え隠れするように、媚を売らない近寄り難さのようなものも伴って。
そしてプロがダンスで人々が憧れることのできる魅力の空間を表現する事でこそ、アマチュアの方がそれに近い雰囲気を体感して楽しめて、そのためのテクニックを学んで日々が生き生きとしていくと思うのです。
ダンスとなるとスポーツ的な部分や技術的に意識が行きがちですが、魅力的なダンスを踊ると言う観点から、最優先ではなくても「色気」と言う抽象的なことを、あえて意識してアンテナを張っていく事はきっとプラスになると思います。
ダンスの見え方も違ってくるかもしれませんよ!
コレ、どうぞ!